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教育疎開する家族(前編)
家族 家族 2017.11.17

教育疎開する家族(前編)

都会で子育てをしていると、「東京って、子ども育てやすいよね」と言うママに出会ったことがない。

というのも、出産後のママ達にはワンオペ育児の危機のみならず、すぐに選択しなければならないことが山積みのように押し寄せてくるからなのだ。

例えば、保育園と自分の復職の関係、幼稚園か保育園かの選択(どちらかに選んだ後、さらにはどんな教育方針の園に入れるか等の選択)、塾や習い事選び、そして我が子の人生最初の受験をいつに設定するか(幼稚園受験?小学校受験?それとも中学校受験?それとも高校まで一切しない?)等々、親にとって悩みの尽きないものばかり。


誰だって、何も横並びになりたい訳ではないけれど、我が子だけついていけないのは心配なのである。

だから、塾一つとっても、(実は志望校なんてまだわからないし、そもそも受験に対して確固とした考えもないけれど、みんな入るならうちも塾に)という思考になるのは、その都度訪れる判断を誤りたくないと思う親心なのだと思う。


でも、そんな選択を迫られるような子育てに、誰でも息苦しさを感じてしまう瞬間はある。(出産前の、あのふんわりと幸福感に満たされた日々が、一番幸せで楽しかったな…)と、内心思う人もいるのでないかと思う。

他者を見て「うちもやらなきゃ」と思わせられる環境から距離を置く

こうした都会での子育ての窮屈さと、早くから何事も迫られる選択そのものに「NO!」を出し、敢えて東京の郊外や地方の田舎で子育てをする生活を選ぶ家族もある。


今回このような形で書くことを許してくれた友人のAさん家族は、建築家のご主人と、公認会計士の奥さんによる共働き家庭で、2人のお子さんがいる。

都心のマンションに住んでいたが、その地区独特の異様なまでの教育熱の高さに、妙に「冷めた目」でお二人は見ていたという。

「だって私たち、二人共地方出身で、大学から東京でしょ?受験なんて高校からが普通だったから、どうして幼稚園や小学校から毎週のようにお受験塾に通わせて入れなきゃダメなのか、全然理解できないのよ。でも、保育園のママ友にまで「それじゃ、子どもの将来どうするの?」って真顔で言われるんだけど、(正直そうかな?全て子ども次第じゃない?)と面と向かってまで言うのは気がひけて…。」

と、苦笑いで話してくれた。


そして、この会話をした約1年後、Aさん家族は子どもの小学校入学を期に、都心のマンションから、東京のとある郊外へと引っ越したのだった。

何でも、周囲を見て「うちも!」「うちも!」と急かされる子育て環境とは、我が身も子どもも「一線を置く」決意をしたという。

そこで、私はAさんに会いに行くことにした。


(後編へ続く)

この記事を書いた人 おおつかけいこ 教師歴10年の経験をもつ教育者。ライティングの「ものかき」でマネージャーを務めるほか幼児教室も主宰 おおつかけいこの記事をもっと読む>> 最新記事を毎日お届け
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