2017.05.24
日本でいちばん大切にしたい会社
2008 年に法政大学の坂本光司教授が書いたベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』をご存知だろうか。坂本教授は「会社には五人に対する使命と責任がある」とその本の中で言っている。
五人とは①社員とその家族、②外注先と下請け企業の社員、③顧客、④地域社会、⑤株主(出資者)のことを指す。すなわち、彼らを幸せにすることが会社の使命であり、責任であると本書では断言されているのだ。
「しかし、会社ならば最初に持ってくるべきなのは社員ではなく顧客であるべきではないか」と感じるかもしれないが、坂本教授はそんな疑問を「違う」と一刀両断している。
立派な社員がいてこそ、多くの顧客を満足させることができる。実績や売り上げというのは確かに重要であろう。だが、何よりも「人材」という資材がなければ、会社という砦はもろくも崩れ落ちてしまう。社員を大切にしない会社は自分で自分の首を絞めているということになるが、それを理解していない経営者が多いと、この本では何度も嘆きの言葉がつづられている。
社員は利益だけを求めているわけではない。この会社で働けて誇らしい、と思えるものがあるかないかで、社員のモチベーションは大きく変わるだろう。社員だけでない。地域も出資者も誇れる会社であるべきだ。
この本がきっかけで、「人を大切にする経営学会」という団体が誕生した。文字通り、人を大切にする経営とは何かを議論したり学んだり、良い取り組みをしている会社を表彰して激励する団体だ。
人を大切にするとは、すなわち人の為に生きるということ。人間は「人の間」と書く。人は人と関わらなければ生きてはいけない。どんなコミュニティであろうと「人」を忘れた瞬間、崩壊せざるを得ない。それは「会社」だけではないだろう。