「フードロスに要注意!」廃棄するために生産してるの?と呆れる前に考えるべき「非常食の賢い備え方」と「人と分かち合える非常食」
首都圏大災害に備えて、東京都は乾パンやクラッカーといった非常食を膨大に備蓄している。都民のためには必要なことには間違いないのだが、賞味期限が切れた場合の処分量もバカにならない。期限切れの間近の非常食が2016年には約10万食、2017年には約20万ほど食無料配布されたこともある。
まだ食べられる食べ物が捨てられることを食品ロス(フードロス)という。賞味期限切れ食品の大量廃棄でたびたび話題になる問題だが、これが日本ではどのくらいの量かと言うと、年間約600万トン以上出ている。ちなみに世界ではおよそ13億トンで、これは生産される食糧のほぼ3分の1に等しい。
「捨てるために作ってんの?」と思わずツッコミたくなる数字だ。ちなみに約600万トンのうち半分は家庭から出ているらしい。塵も積もればとは、まさにこのことだろう。
さて、そろそろ今回の本題に話を移ろう。実はこの防災と食品ロスを両立させて解決できる方法があるという話を聞いたのだ。さっそく確かめに行こう。
回して備える「ローリングストック法」で食を多彩に!
訪れたのは東京都環境局が主催する学習講座。題して「非常食がごちそうに変身?!防災備蓄食品からフードロスを考える」。
ここの講座で面白い話を教えてもらった。東日本大震災被災者への聞き込みによると、意外に多かったのが用意してた非常食が期限切れで食べれなかった、という事例。数年前に一回準備してそのまま放置してた家庭が多かったようだ。
そこで提案されたのが「ローリングストック法」で、災害時の備えを平時の食材として時々使うというもの。例えば、12食分(3食×4日分)を準備するとして、これを1カ月に1回の頻度で非常食を1食使い、食べた分だけ買い足す。これを続けると1年後には用意した非常食は新しいものにそっくり入れ替わっている。
このやり方だと、賞味期限が極端に長いものでも構わなくなる。レトルト食品やフリーズドライ食品などレパートリーが多彩になり、普段食べ慣れているもの、体質に合ったもの、調理しやすいものといったように、「自分に合った非常食」を選ぶことができるのだ。
非常食との「2倍おいしい」付き合い方
防災にしろ、食品ロスにしろ、重要な問題なのだが一般人が関わるには少々難しい。だが、「食事」というテーマならば家庭とも密接している。
「回して備える」という観点を持って食材管理を行えば、防災意識も持てるし、もしかたら非常食以外の冷蔵庫の中をうまく管理することにもつながるかもしれない。非常食で両方に関心を持たせるとは、なかなか「うまい」方法だ。
講座では乾パンのアップルクランブル風ケーキや乾燥米で作ったカニとカリフラワーのクリームドリアが紹介された(もちろんレシピも)。味気ない乾パンや乾燥米ですら、おいしい料理になるのだ。試食会も行われたので、私もゴチになった。
うん、全然おいしい。
非常食だって工夫すればおいしくなる。ならば冷蔵庫の中のものだって、いろいろ工夫すればアイデア料理の一品くらい作れるはず。家族で一緒に考えてみるのもおすすめしたい。
忘れてませんか?「非常食」を選ぶ際の大事なポイント
あと最後に、講座で聞いた興味深い話を紹介する。
東日本大震災の被災者に、今非常食を準備するなら何を備えますか、と聞いたところ、ある人は「キャビアの缶詰」と話したそうだ。どうせ死ぬなら最後に高級品を食べて死にたい、という発想だ。まあ、分かる。
ある人はたくさんのキャンディーを家から持ち出した。理由は「みんなに分けてあげられるから」という。これは目からうろこだった。
実際のところ、被災体験者に話を聞くと「みんなで食べた食事や分け合った食事のおかげで支えられた」という人が結構多いらしい。極限状態の中での思いやりは「食事」の本来の役割に気付かされる。
皆さんも非常食を選ぶ際には「人と分かち合えるもの」を意識されてはいかがだろう。