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いい母であることを越えた先にあるもの
家族 家族 2017.08.07

いい母であることを越えた先にあるもの

女性が子どもを産み、子育てを始める時、まず自分を育ててくれた“母親”の子育てを記憶で辿るといいます。

自分が小さいうちは、お母さんに〇〇〇してもらった。
こんなことも、あんなこともしてもらった。

幼い記憶を掘り起こし、今自分の目の前にいる愛しい赤ちゃんを、一生懸命育てようとする日々。
ところが日々の子育ての中で、うまくできない壁にぶつかったり、育児本通りに進まないことにいら立ったりする自分に、ふと気づくことがあります。

どうしてうまくできないの?
周りのママは涼しい顔して育児してるのに。
育児本通りに育たないのは、うちの子の成長が遅れてるの?
私の育て方が悪いの?

思うように運ばない焦りや怒りを、赤ちゃんに怒鳴ることでぶつけては自己嫌悪と我が子への申し訳のなさに涙を流し……
そんな日々を人知れず自宅の一室で送る親子は、実際にそう少なくないのです。

“いい母縛り”にサヨウナラ

日本の各都道府県の自治体には、保健センターなどに育児相談ルームが設けられています。そこでは、子どもとの関係や育児に悩むお母さんのために、臨床心理士や保育士の資格をもった人々が相談にあたっています。
カウンセリングルームに入るなりしくしくと泣き出し、背中をさすってもらいながら話をするお母さんに

「よく相談してくれましたね。あなたは勇気がありますよ。精一杯子育てをしていて、育児の壁にぶちあたって悩むお母さんはすばらしいのよ。怖いのは、自宅から出てきてくれなくなることなの。」

そう言われて、救われるお母さんはどんなに多いことでしょう。

ただでさえ育児の不出来を他人に晒すのは、ある意味本当に勇気のいることで、女性として母親としてのプライドがズタズタになっているのです。

「子どもを産むと、昔のことをいろいろ思い出すでしょ?その中で、今まで深い奥底にしまってきた過去の親子関係が急に蘇ってくることがあるの。例えば、自分の母親のように育てたいのに私はできないとか、逆に母親みたいにはなりたくない、私はもっといい子育てをするとか。でもね、ここに来るお母さんにはお伝えしているんです。皆さん、既に毎日真剣に子育てしていらっしゃるわって。だから、自分の中にある“いい母”像をリセットしてみて。あなたらしい子育てができればそれでいいのよ。」

こうして、子育てがうまくできない原因を自分内部に無理に見つけようとしなくてもいいと言ってくれる人がいるお陰で、心が楽になったお母さんは子どもと向き合う子育ての日々に再び戻っていくのです。

雑誌の中に登場しそうな理想的かつ美しい親子像を自分の中で捨て去り、今の自分と我が子を受け容れた時、他の誰でもない本当の親子の関係、不格好親子が始まるのです。

不格好いいじゃないですか。親と子どもの心がしっかりつながっていれば。

この記事を書いた人 おおつかけいこ 教師歴10年の経験をもつ教育者。ライティングの「ものかき」でマネージャーを務めるほか幼児教室も主宰 おおつかけいこの記事をもっと読む>> 最新記事を毎日お届け
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