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香港はいかにして長寿世界一になりしか
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香港はいかにして長寿世界一になりしか

香港の平均寿命は世界一だと言われている。ただその長寿の秘訣については様々な見解があるようで、どうもはっきりしない印象を受ける。豊富な漢方薬、医食同源が根付いた食生活、充実した医療制度、喫煙率の低さ、運動する習慣等、いくつかの要因を挙げられても、どうも同じ長寿国の日本人にとっていまいち腑に落ちないのではないかと思われる。

映画「桃さんのしあわせ」

少し前に「桃(タオ)さんのしあわせ」という映画を観た。香港を舞台にした作品だ。
13歳で家族を戦争で失い、梁家に雇われて60年間働き続けたメイドの桃さん。今では梁家の人たちは海外に移住し、香港の家には雇い主の息子ロジャーだけになった。ロジャーにとって桃さんはいつも当たり前に傍にいてくれた存在。桃さんは今日もロジャーのために市場を歩き回って美味しい料理を作ってくれる。そんなある日、桃さんが脳卒中で倒れ、大事には至らなかったものの後遺症が残ってしまう。そして迷惑をかけられないから「お暇をいただく」と願い出て、老人ホームに入ることを選ぶ。

いつも空気のように身の回りの世話をしてもらっていたロジャーは初めて、桃さんがかけがいのない人だったと気づかされ、できるだけ仕事の合間に時間をつくり献身的に尽くす。慌ただしい生活のなかで椅子に深く腰をかける度に桃さんの事を考えるようになる。「終わり支度の季節」に二人は寄り添いながら母親と息子のようになっていく。

作品の後半、そんな二人の強い結びつきを称えるように、ある老人が施設の廊下で李商隠の詩をよむシーンが印象的だった。「会えたとしても別れが居た堪れない/春風はもの憂く撫でて花はどれも崩れていった/蚕は死に至ってようやく糸をつむぐのをやめ/蠟燭は燃え尽きてはじめてとめどない涙を乾かす/眠れずに迎えた鏡に色あせた髪/月明りは詩を吟じるその背中にも冷たいだろうか/たとえ蓬莱山に暮らすとしてもあなたは消えない/青鳥よ、どうか手を尽くして消息を伝えてほしい」(私訳)。桃さんは梁家の人たちに尽くして暮らしてきた。長い間、彼らに注ぎ込まれた愛情は、ささやかな花を咲かせ続ける。誰かの温かい手が傍にあるのなら、老いも病もその人生を転ばせることはあったとしても、しあわせな日々はやはり綴られていくのだ。

長寿の秘訣は社会的なつながりか

長寿の秘訣について、心理学者ジュリアン・ホルト=ランスタッド博士の見解は興味深い。彼女は「強い社会的つながりを持っている人は、弱いつながりしか持たない人に比べて、生存率が50%高い」との研究結果を提示している。また高齢者の死亡リスクを高める可能性のある要因として「孤独感」「社会的孤立」「一人暮らし」を挙げている。

香港は中国の特別行政区であり、東京都の半分程度の面積に700万人強が暮らす人口密集地である。(そもそも国別の平均寿命ランキングでは日本が一位)そんな環境的な条件もあいまってか、香港の高齢者は孤立することなく、老後を楽しく過ごしている印象を受けるという。狭い地域という事で外に出れば見知った顔に出会えるそうで高齢者は外出を好む傾向があり、気候が温暖なこともあるのだろう、朝から集まって太極拳で体を動かしたり、公園でゲームをしたりおしゃべりをしながら自然とコミュニティが作られていく。また社会にはお年寄りを大事にし、家族で支えていこうという文化も残っている。節句には家族や親族が集まり長寿を祝って食事をするというし、高齢者がぞんざいに扱われない風潮があるのではないだろうか。そしてコンパクトな香港の住宅事情のためか3世代同居なども珍しくないようだ。同居していなくても遠くに暮らすわけではないので、気軽に会う機会をつくりやすのいのではないかと思われる。

そして近年では外国人のメイドさんたちが香港の人たちの生活を支えているという。家事、育児に加え、高齢者のサポート役も担っているそうだ。そのような話から総合的に推測すると、孤独感を抱くことが日本と比べて少ないのではないか。他の人たちとの社会的な関わりを継続して持つことは、人が幸福に生きるために大切な事だ。無理に長生きを目指す事がよいとも思えないが、日本は香港の人たちのライフスタイルから学べることは多い気がする。

この記事を書いた人 関口オーギョウチ 埼玉在住。サブカルやマイノリティがつくるコミュニティに関心あり。矯めつ眇めつそこに宿る魂に触れたいなと思ってます。 関口オーギョウチの記事をもっと読む>>