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ドナルド・トランプ時代のアメリカ人難民

今月のはじめにアキ・カウリスマキ監督の映画「希望のかなた」を観た。映画好きの友人に急に誘われてのこのこと渋谷のユーロスペースに向かったので、なんの前情報もない。待ち合わせの時間から予想して、おそらくこの映画を観るんだろうなと電車で少しだけ検索をかけた。どうやらフィンランド出身の有名なカウリスマキ兄弟の弟のほうが手掛けた作品だということは分かった。

ただ、アキとかミカという名前の印象が強くて、映画館につく頃にはすっかり監督は新進気鋭の女性なんだろうなと脳内変換されていたから、誤って更新された先入観で観た映画は、そのギャップも相俟ってやけに渋く感じられた。そんな焦点の定まらない私のために、友人が帰り道で事前に知っておくべきだっただろう予備知識を話してくれた。北欧の巨匠アキ・カウリスマキは、小津安二郎を敬愛し大きな影響を受けたという。それは無人島に1本だけ映画を持っていくとしたら「東京物語」を持っていくと言い切るほどで、たしかに作風にも小津的なものを感じる。

難民3部作

5年前にヨーロッパの難民問題を描いた作品「ル・アーヴルの靴みがき」に続く難民3部作の2作目と位置付けられる「希望のかなた」。監督はインタビューで「私がこの映画で目指したのは、難民のことを哀れな犠牲者か、さもなければ社会に侵入しては仕事や妻や車をかすり取る、ずうずうしい経済移民だと決めつけるヨーロッパの風潮を打ち砕くことだ」と語っているようだ。

この作品は、シリアのアレッポからフィンランドにたどり着いた難民の青年と、人生を仕切り直そうとレストラン経営をはじめた初老の男の話である。どちらも「帰る場所を失った孤独」の曲がり角で出会う。異国にたどり着いた青年と妻のいる家を出ざるを得なかった初老の男は、状況は違えど同じ孤独を抱えている者同士、素通りすることができない。そこに「小さな希望」がうまれるという話だったと思う。

映画『希望のかなた』予告編

自由な女神プロジェクト

後日、上野公園を歩いていると唐突に、半壊した小さな自由の女神が展示されていた。村上さんという芸大生が卒業制作にプロジェクトとして出品したものらしい。もともとはパチンコ屋の看板として制作されるが、店が潰れたことにより、石巻市の公園に引き取られ、広場のモニュメントとなっていたが、そこで被災。震災直後は津波に耐えたことで「復興のシンボル」として扱われた時期もあったが、耐久性の問題もあり震災から3年後に倉庫に格納されることになったいわゆる「震災遺構」である。

それを村上さんが引き取り、2018年3月までは上野公園に留まっているが、それ以降の「新たな移設先」を募集している。そんなキャプションを読んで「この女神像のレプリカは難民だ」と、なんだか感傷的になった。どうも素通りできないような気持になった。映画のあのシーンが頭に浮かんだ。ただ相手は仮にも女神である。本来であればその台座には「疲れ果て、貧しさにあえぎ、自由の息吹を求める人々を、私に与えたまえ。人生の高波に揉まれ、拒まれ続ける哀れな人々を…」と刻まれているはずではないのか等と、腰から下が失われたその姿に心を揺さぶられた。おそらく春には宮城に戻ることになるのだとは思うが、温かく受け入れてくれるコミュニティはあるのだろうか。

「自由な女神プロジェクト」

私は先日、復興支援イベントの動画を視聴し「コミュニティは地域の一丁目一番地である」と教えられた。コミュニティ復興支援の目的は、単に自治組織を立ち上げるだけではなく、住民が「住み慣れた地域で」「可能な限り」「自分らしく暮らし続ける」ために「どんなコミュニティであるべきかを住民同士が共有できる仕組み」を作ることだという。

「コミュニティ形成支援のいま」

もちろん長い道のりにはなるとは思うが、いつか被災地のどこかに女神像が再び設置されることはないだろうか。そして「疲れ果て、貧しさにあえぎ、自由の息吹を求める人々を、私に与えたまえ。人生の高波に揉まれ、拒まれ続ける哀れな人々を…」とランプを掲げて「他者」を受け入れてくれるほどに、強固なコミュニティが取り戻されるなんていうのは絵空事だろうか。

なんにせよ難民問題から遠くなりがちな日本においても、同様の経験をした人たちはいるはずである。「社会的包摂」という課題を考える上で、状況は違えど同じ孤独を抱えたことのある人たちがつくるコミュニティのほうに、小さな希望があるのではないかと感じる。

この記事を書いた人 関口オーギョウチ 埼玉在住。サブカルやマイノリティがつくるコミュニティに関心あり。矯めつ眇めつそこに宿る魂に触れたいなと思ってます。 関口オーギョウチの記事をもっと読む>>