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Q.次の言葉の意味は?「ごらごらよー」
コミュニケーション コミュニケーション 2017.10.11

Q.次の言葉の意味は?「ごらごらよー」

「絶滅の恐れのある・・・」という言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか? 
佐渡島のトキや熱帯雨林で暮らすオラウータンなど、生き物の前に付くことが多い言葉だが、生き物以外だと何が思い浮かぶだろう?

その一つが「言語」だ。使う人がいなくなれば、その言語は「絶滅」したことになる。言語と書くとカタいが、方言も含まれている。

実はユネスコによれば、日本でも「絶滅の恐れのある」言語・方言が8つある。アイヌ語や沖縄の言葉はよく知られているが、東京都の伊豆諸島にある八丈島の方言も絶滅が危ぶまれている言語の一つだ。

「ごらごらよー」(早く早く)、「でーじけにゃー」(きれいだね)といった言葉だが、現在の話者数は約 1500 人弱とされている。子供や若い世代はほとんど使わず、同じ世代の高齢者くらいでしか使われることがないため、八丈方言は次の世代に伝わっていないのが現状だ。島民の意識も昔は「消滅してもしょうがないよね。大事だけど、時代の流れもあるし・・・」という状態だったという。今ではやや改善はしているものの、依然として高齢者が亡くなれば自然消滅は避けられない運命であることは変わっていない。

教育委員会では学校での方言教育を実施。学習の中で、方言カルタで遊んだり、地域の話者をゲストとして学校に呼ぶなどの取り組みを行っている。一年間に三時間と、少し短い気もするが、継続して9年間行われている点は評価されるべきだろう。もちろん、教える教師側は島外出身者ばかりなので、教師向けのマニュアルやカリキュラムも作成されている。家庭や地域では話さないことを踏まえ、語彙を増やしながら、まずは八丈方言のことを知り、慣れることを目指している。単なる学習ではなく、島の言葉に触れることで島の子供としてのアイデンティティを持ってほしいという願いが込められた活動だ。

子供たちの反応も悪くない。生徒の一人は「自分たちの会話の中に、方言が一つも入ってこないのは寂しく感じました。伝統を守り続けていくために、自分も何か行動を起こさないといけないと思いました」と語る。 最近では、「アナと雪の女王」主題歌を八丈方言にして歌ったり、ラインで八丈方言スタンプを作成するなど、新しいアイデアも出てきている。

今後の課題は方言の継承や保存活動を今まで通り継続できるかどうかだ。人材不足が深刻な課題らしく、来年高齢で退職するスタッフもいるので、どう体制を維持していくかが問題となっている。また、島での取り組みは今年で10年を迎えるが、10年を振り返ることも重要だ。簡単ではないが、一時的な活動にしてしまわないよう、盤石な基盤を固めていくために必要な壁なのかもしれない。

この記事を書いた人 青井坂道 歴史・文学・自然・思想の好きなライター。ただいま、自己研鑽に励む日々を送ってます。 青井坂道の記事をもっと読む>> 最新記事を毎日お届け
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