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福祉は風俗に負けている
コミュニティ 2017.07.28

福祉は風俗に負けている

「子供の貧困」が問題になっている。全国の6人に1人の子供が貧困状態にあるとされ、政府レベルで対策を行おうとしている中、日本財団でも対策チームを作り、研究やプロジェクトを進めている。そのチームがまとめたデータやレポートが『子供の貧困が日本を滅ぼす』(文藝春秋)という文庫本になっているので読んでみた。

本書は、子供の貧困による社会的損失を約40兆円と示すなど、分かりやすく衝撃的な内容が多いが、第三章の当事者である子供たちへのインタビューはさらに衝撃的だった。

福祉系大学に通う20代の女性は、過去に母親から心理的な虐待を受け、自立援助ホームで2年間を過ごした経験を持つ。彼女はホームや保護所などの人々とふれ合う中で、「自分がどん底にいる時に手を差し伸べてくれた人たちに憧れて、自分もそうなりたいと思い、大学進学を決めた」と語っている。彼女の家庭環境を考えれば、第三者の大人に深い信頼感を持てたのは喜ばしい。が、問題はその後だ。進学にはお金が必要だから、当然ながら学費を工面しなければならない。

彼女は大学進学の学費を得るために風俗の仕事をしていた。

もちろん、それ以外の仕事もしていたのだが、奨学金をもらえるまでは大学に入っても生活が苦しく、風俗の仕事を続けた。『福祉は風俗に負けている』と言う人がいるそうだが、彼女もまた、
「12時間働けば7~8万円入ってきますし、普通の女の子だったら、福祉より風俗を選ぶと思いますよ。」と考えている。

彼女によれば、社会的養護の子供だけでなく、普通の大学生が学費に困って風俗の仕事を選ぶことも多いという。看護の勉強をする学生が、次の客を待つ間、下着を替え髪を巻き上げながら実習計画を書いていたこともあったそうだ。

彼女のような立場の女性が夢を持って進学のために努力するのは喜ばしいことには違いない。だが、このやり方で本当に彼女が幸せな人生を送れるのか、と思うと疑問を感じてしまう。また、これは福祉が風俗を超える額の援助をすれば解決できる問題とも思えない。問題の焦点は金額ではないのだ。

ある自立援助ホームではこんなことがあったらしい。その施設で援助を受け、仕事を得た青年は、初めての給料をほとんどゲームやマンガに費やしてしまった。彼にとって、将来の自立に必要な貯蓄が必要なはずなのに、短期的な自己満足を優先してしまったのだ。貧困を背景とした周囲の環境(不規則な生活、頼れる大人がいないなど)のため、子供たちの精神的な成長が鈍ってしまうことから、このような問題が生じてしまうのだ。

この問題は非常に目に見えづらい。価値観や生き方に属する内容だからだ。先に例として挙げた福祉大の女性も一応、「一生懸命苦労してお金を稼ぎ、夢を持って大学に通っている」ことになるから、人によっては「成功事例」として高く評価するかもしれない。だが、貧困が連鎖しているのはもっとシンプルな理由ではないだろうか?人間はどういう生き方をしたら幸せになれるのかという側面を掘り下げた教育ができるだけで、「自分の体を売ること」や「お金の使い方」についても深刻に考えることができるのではないだろうか?そこに重点を置かないがゆえに、子供たちが目先のことしか考えられない生き方をしているのであれば、子供の貧困は我々が「生き方」を真剣に考えない限り、永遠になくならないだろう。

この記事を書いた人 青井坂道 歴史・文学・自然・思想の好きなライター。ただいま、自己研鑽に励む日々を送ってます。 青井坂道の記事をもっと読む>>
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