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アセット 5 寄稿記事:地域コミュニティに明日はあるか 「市役所の“下請け”としての町会の苦悩」もはや協働というよりも「強制労働」か…
コミュニティ コミュニティ 2018.06.20

「市役所の“下請け”としての町会の苦悩」もはや協働というよりも「強制労働」か…

地域の声を町会長が代弁し、市長がその声に耳を傾ける―。 来月、市政座談会がある。

水はけが悪い、側溝のフタがガタガタうるさい、信号機がないので危ない…、これまでは生活上の困りごとを取り上げてきた。今年は、どうするか。私はどうしてもお願いしたいことがある。それは町会運営への人的支援だ。

先の町会長会議で、市政座談会のあり方に一石投じる発言があった。

「道路の穴を直してほしいとか、そういう要望は個人でもできる。10町会が集まる市政座談会なのだから、もっと大きなテーマを話し合ったほうがいいのではないか」

スーパーが閉店したため高齢者が困っている、こんな問題がその一例として挙げられた。

確かに、地区を跨(また)ぐ包括的な懸案事項を話し合ったほうが有意義だ。

ただ、10町会で代表質問をするという話はまとまらず、結局、各町会で要望を提出することとなった。

強制①

うちの町会では、道路がどうの、ゴミがどうのという前に、町会そのものが十分機能していないという問題が深刻だ。

町会は今、地域の問題(防犯、防災、保健衛生、公園管理、子供や高齢者の見守り…)を自主的に対処できていないし、そもそも、町会員たちが集まる機会すら十分作れていない。そこで、町会のマンパワーを高めるための対策を要望しようと思っている。

そんなことを市長に要望するのは筋違いだ、と突っ込まれそうだ。でも、そんなことはない。

町会は市役所の“下請け”として、市の広報誌を配布したり、ポスターを掲示板に貼ったり、530(ゴミゼロ)運動をやったり、公園やちびっこブールを管理したり、いろいろ働いている。社会福祉協議会の“出先機関”としても募金を集めたり、リズム体操をやったり、市の福祉増進のために頑張っている。

このままだと、市役所の“下請け”としての仕事が果たせなくなる。“親会社”に人を派遣してもらうなり、なんらかの支援をしてもらわないと立ち行かなくなる。

具体的に何をしてほしい?って聞かれたら、市の職員を派遣してくれと頼みたい。それが無理なら、少なくとも「協働」のあり方を見直すよう要望したい。

市は「協働」の名のもとに、ちょいちょい負担を強いてくる。

・平日の昼間に市役所に集まるよう会議を設定する

・提出物を市役所に届けさせる(郵送で提出する場合、封筒も切手も町会負担)

・お金の支払いは市役所に現金で持参させる(振り込み不可)

・市から町会への届け物は、平日の昼間に自宅に待機させる

・防災無線の点検で平日の昼間(指定時間)に自宅に待機させる

市は「補助金を出している」と高飛車だ。でも、同じ仕事を一般企業に発注すると、絶対に請け負ってもらえない、ほんのビビたる金額だ。町会=ボランティアということに甘えている。

強制②

しかも、えげつないのは「町会連合会のほうで同意されたことですから」と責任の所在を町会連合会にしていること。困っていない町会を持ち上げることで、困っている町会にも一律の「協働」を求められる仕組みなのだ。無理無理にやらせるのは協働ではなく“強制労働”に近い。

市の「協働」は、町会長や町会役員は定年退職した高齢者で、女性部は専業主婦で、時間的にも金銭的にも余裕がある、だから市役所に足を運ぶことくらい苦にならないでしょ、というのが前提になっているようだ。

強制③

時間的余裕のある人が多くいる町会と、、サラリーマンばかりで役員の少ない町会で「協働」が同じでいいはずがない。前者の場合は「協働」の負担割合を市:町会=5:5にしたとしても、後者は9:1にすべきだ。

もし、市長が核家族、共働き、若い世帯を見据えた町会のあり方を考えるのなら、「協働」のあり方を変えてもらわなきゃ困る。

老人会が消滅し、子供会も消滅した。いずれも役員(担い手)がいないからだ。どんどん地域コミュニティが失われている。

町会を潰すわけにはいかない。若いサラリーマンやパートの主婦でも担い手になれる、そんな仕組みにしなければ、未来はない。

“親会社”にも、そこんとこを分かってもらいたい。

寄稿元:地域コミュニティに明日はあるか

この記事を書いた人 吉原正夫 地域コミュニティが崩壊している。この流れを食い止めるには、どうしたらいいか。地域コミュニティ再生に掛けた現役町会役員の挑戦を綴る。
地域コミュニティに明日はあるか
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