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あなたの近所の穴場ランチ『お役所ごはん』#12 世田谷区役所 編
コミュニティ コミュニティ 2019.07.16

あなたの近所の穴場ランチ『お役所ごはん』#12 世田谷区役所 編

お役所ごはん

使う電車は東急世田谷線という路面電車。

降り立った地は、特に高い建物もなく、駅前に巨大商業施設が並ぶわけでもない住宅街。

私は緊張していた。

これから何か大事な決断をするわけでもなく、特別なことをしようというのでもない。

ただ世田谷区役所で昼食を取ろうとしているだけである。

緊張の原因はおそらくこの『街』。

街に緊張するというのもおかしい話なのだが、間違いなく私は緊張していた。

それは街から溢れ出るあまりにも上品な空気からなのか。

はたまた『世田谷の住宅街』という言葉に怖気づいているのか。

私の精神的な弱さを鑑みると、答えは恐らく後者だろう。

私は区役所にたどり着けるだろうか。

勇気を振り絞り、世田谷駅から歩みを進める。

情報では駅から5分ほどの場所。

しかしながら極度の緊張状態である私には無限の時に感じた。

これは現実だろうか。

空が見たこともない、紫色をしている。

すれ違う緑色の人間が皆、白目を剥きながらこちらを見つめてくる。

「タチサレ…ヨソモノ…」 脳内に直接語りかけてくる。

駅に戻りたがる気持ちを無理やり抑え込む。

ぐっと目を閉じ小声で呟く。

「イャーデン」

ある魔法剣士が教えてくれた、幻術を祓う陣を敷く呪文だ。

ふっと肩が軽くなる。

まだ、進める。

ゆっくりと歩き出す。

空に色が戻った。

しかし、呪文を唱えながら歩く私を見る人間の目は、白いままだった。

世田谷区役所

体感で約30年が経過した頃、ようやく世田谷区役所の文字を目にすることができた。

足の震えは、到着した嬉しさから来るものなのか、精神が還暦を迎えているからなのかは最早特定できそうにないが、心は喜びに満ちていた。

世田谷区役所

世田谷区役所

世田谷区役所

上品な街並みに溶け込んだ、まるで大学のキャンパスを思わせる庁舎。

古くはあるが古臭くはない、洗練されたデザイン。

おしゃれさを目の当たりにして身体がこわばる。

あと少し。

案内板で食堂の位置を特定し、階段を下る。

あった。

世田谷区役所

世田谷区役所

世田谷区役所

「ありがとう」

言っていた。

そこにあったのは世田谷色に着飾ったおしゃれなブッフェではなく、ぎゅうぎゅうに混み合った、おじさん達のヒジがぶつかり合う、給仕のおばちゃんが元気な、あの『食堂』だった。

おしゃれの波状攻撃を耐え抜いたものだけがたどり着ける、庶民のオアシス。

どこよりも気高い敷居の低さが、私の心をすすいでくれた。

世田谷区役所

なんとか席を確保し、注文したのは

『あんかけ焼きそば』530円

しつこ過ぎない優しい餡が縮れた麺に容赦なく絡む。餡の熱が消耗した身体に染み込む。

「ありがとう」

また言っていた。

「私は、ここにいてもいいのかな」

「もちろんさ。世田谷は、誰も拒まないよ」

咀嚼するたびに、世田谷との会話が弾む。

「ありがとう」

最後の一口を飲み込むと同時にもう一度お礼を告げ、私は食堂を後にした。

さっきとは違って見える街並み。

明るく、美しく、静かな街並み。

もう怖れるものは何もない。

 

「世田谷は、私の街だ…!」

 

自分の耳に届くか届かないかの声でつぶやき、一歩前に踏み出した。

そう、私は、自由だ。

 

 

 

 

 

 

p.s.

自由をはき違えた結果このような記事になりました。

大変申し訳ございません。

この記事を書いた人 プーケットマーケットひだか 元公務員の地方公共団体大好き芸人プーケットマーケットひだか。オスカープロモーション所属。役所のかわりにいくらでも謝ります!
プーケットマーケット
Twitter @mssmn6417
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