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「日常のなかに観光資源を見つけよう!」外国の人たちと分かち合える魅力的な日本を
観光 2018.02.10

「日常のなかに観光資源を見つけよう!」外国の人たちと分かち合える魅力的な日本を

昨年の訪日外国人(インバウンド)の数が、過去最大の 2869 万人になった。インバウンドの消費額も初めて4兆円を突破し、政府が掲げる 2020 年の外国人旅行者4000万人という目標がかなり現実味を帯びてきた。経済効果もさることながら、日本の魅力が海外にどんどん発信されることは喜ばしいことだろう。

しかし、である。

この結果にあぐらをかいて安心することはできない。観光面で日本が解決すべき問題は実は山ほどあるのだ。

最近、東京都が観光事業者らを招き、東京駅の近くでフォーラムを開催した。今、東京都は観光にかなり力を入れており、最近は小笠原諸島などの島嶼地域や多摩地域などの地方観光も積極的に後押ししている。

そこで東京都の取り組みの紹介や各団体同士の相談会が行われたのだが、注目を集めたのは講演会だ。

名前は失念したが(確か時々 TV に出てくる評論家だったような・・・)、仮に講師を Y 氏としよう。 Y 氏は講演の中で、 「観光は量から質への転換が必要だ!」 と断言していた。

どういうことかいくつか事例を出して説明しよう。

日本で外国人からの認知度が高く、評価も高い都市の一つ、京都。

京都は今、パンク状態らしい。人が多すぎるのだ。交通網はすぐマヒし、お店は行列だらけでホテルも予約が取れない。都市の許容量をはるかに超える数の旅行者が押し寄せてきているためだ。

お店は行列だらけでホテルも予約が取れない。都市の許容量をはるかに超える数の旅行者が押し寄せてきているためだ。

さらに問題なのは違法民泊問題。

あるタクシー運転手が外国人を拾ったが、告げられた宿の名前には一切心当たりがない。住所検索などでやっと着いてみると、宿泊施設などではなく普通の民家なので「なんだこりゃ?」となる。

実は少子高齢化などが原因で空き家となった住宅を外国資本が買い取り、勝手に外国人向けの宿にするケースが増えているのだ。泊まるだけならまだいいが、騒音やごみ出しなどで近隣住民とのトラブルが絶えない。責任者も従業員も置いていないし、治安上の不安もある。しかも正確な数が分からないからコントロールすらできない、かなり深刻な状況だ。

海外にも目を向けてみると、例えばフランスは世界で最もインバウンドの多い国だが、インバウンドによる観光収入は世界第5位( 2016 年度)。パリを見ると、外国人ばかりでフランス人のいない町と化している。要するに外国人ばかり増えて(旅行者だけでなく移民もいるのだろうが)、その割にあまり儲かっておらず、フランス人の住みたい町でなくなっているということだ。

つまり、 Y 氏の言う観光の質を上げるというのは、旅行客を増やすだけでなく、観光収入を増やすことにも目を向けろ、ということだ。もっと身もふたもない言い方だと客単価の増加、となる。

Y 氏はそのために、東京都が解決すべき課題をいくつか挙げていた。

まず一つ、高級ホテルが少ない。

え?そんなの都内にたくさんあるじゃないかって?

いや、それが少ないのだ。 Y 氏いわく、五つ星レベルのホテルが少ないらしい。どれくらい少ないかというと、タイよりも少ないのだとか。パリには 81 、ロンドンには 113 。タイは 42 。

日本、 27 。

・・・お金持ちが寄り付かないのに客単価が伸びるわけがない(ちなみにタイはインバウンドの客単価が高いらしい)。

結局、大量に来て、荒らすだけ荒らして、一銭も落とさずに帰っていく〇〇人しか来ないということになる(〇〇の中に好きな国名を入れてね)。

このほか、交通や公共施設のマーク(ピクトグラフとも言う)がバラバラだとか、フリー Wi-Fi の不便性(全然つながらない)などを指摘。 そして、最後にこんなことを言っていた。

「普通の日常の中にリピート要因になり得るものがある。客と住人が両方満足できるものが、本当の観光資源だ」と。

本当にそうだな、と思う。

観光というと、我々はテーマパークや世界遺産などを思い浮かべてしまう。でも、それは飽きられやすいものでもある。海外の人々が求めているのは、意外にもっと単純なもののはずだ。

一つ、私の体験談をしよう。

私は中国地方出身なので、瀬戸内海には縁が深い。あれはいいものだ。瀬戸大橋を車で渡る時の爽快感と言ったら最高としか言いようがない。橋のど真ん中にサービスエリアもあるのだが、瀬戸内の小さな島の中に作られている。そのため、車はグルグルとらせん状の道路を走りながら、海面から高さ 60 メートルを降りていく。そして思う。

「こんなもん作れる日本ってスゲェ!!」

日本人でもそう思うのだから、外国人だって驚くに違いない。

景色だって一級品だ。知り合いが以前、「夕焼けの瀬戸内の眺めはヨーロッパの地中海にだって勝るとも劣らない素晴らしいものだ」と言っていた。広島と愛媛をつなぐ「しまなみ街道」は多くの外国人が訪れるサイクリングスポットだが、そこから見える島々の眺めは、死ぬ前に一度は見るべきと言えるほど美しい。

気付けば最高なのだ。

けれども気付かなければ、ただのやぼったい田舎の風景で終わる。

不必要に持ち上げることは良くないことだが、良いものに気付かないことも罪だと思う。

日常の中には、我々が最高だと思えるもの、いつまでもここにいたいと思える宝物が埋まっているはずだ。

もっとそれを見つけて大切な人たちと分かち合っていきたい。それもまた、オリンピックまでの楽しい宿題と言えるだろう。オリンピックまで、あと残り2年。

さあ、宝探しの時間だ。

この記事を書いた人 青井坂道 歴史・文学・自然・思想の好きなライター。ただいま、自己研鑽に励む日々を送ってます。 青井坂道の記事をもっと読む>> 最新記事を毎日お届け
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