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国と時代を映し出す鏡
映画 2017.10.12

国と時代を映し出す鏡

最近、日本の文化について担当しているクラスの学生からいろいろな質問を受けます。自分が考えもしない発想や気づかなかった視点からの発言が刺激的です。もちろん、好意的な評価も多いですが、辛辣な評価を受けることも…。きっと、母国を離れて他国で生活してみたことのある方々なら誰もがそういう心境を通過するのではないかと思います。

自分を見つめ直す新しい視点

もちろん、自分自身もこれまでいろいろな日本文化に触れて見たし洋画も見たので、自分なりに日本文化の特徴は知ってはいましたが、その学生たちから発せられる発言一つに一つに鋭いものを感じました。例えば映画で言えば全体的に物語に起伏がないとか、感情表現が弱いとか、退屈なシーンが多いとか。韓国人の学生からは日本と似た文化を共有しているためか、その評価がより鋭利な気がします。たしかに、日本の映画は大きな情感の起伏はなく、全体的に平坦な印象があるかもしれませんね。でも、実際にはそれと同時に同じ文脈を共有している人同士のみ共有できる独特の重層感があるとも言えると思うのです。どちらにせよ、そういった特徴が日本の和歌や俳句の文化の特徴に似ているものだという風に思うのは僕だけでしょうか?季語や枕詞、意味がないように見えてその約束事が通じるもの同士のみが共有できる世界。最新の日本の文化の中に、過去の日本の文化と同じ傾向を見出す…。あー。自分ってその時代の人たちと同一線状にいるんたなぁと、彼らのくれた鋭い視点が何とも深い自己省察のひと時となりました。

時空を超えて

映画というのは面白いもので、その時代とその場所の特徴を本当によくつかんで克明に映し出します。時には実際とは違ったりその特徴が誇張されて描かれることもありますが、そういった誤差も合わせて、もし評価することができれば、その映画を作成したその時代の風潮をつかむことも可能です。そもそも映画というのは決して一人で作り上げることができる作品でないにもかかわらず、膨大な費用が掛かります。つまりそこには多くの人々の努力と苦労が積み重なった結果現れた結果というわけです。しかも、現代多くの人から支持されることが、制作関係者たちの大きな評価につながります。そのためには時代のニーズ、視聴者のニーズに合った作品が求められます。そういった理由からその時代の人々の求めているもの、期待するものが描かれているという意味で映画は一つの時空を超えてその文化を発信し、その文化を味見することのできる機会と言えるでしょう。

時代の先は…?

最近、ケニアに住みながらもせっかく覚えた韓国語の維持のためにも韓国の映画を見ます。韓国映画を見ていると非常にわかりやすいのが、最新の映画では国際結婚をした登場人物が出てきたり、離婚による家族のゆがみなど最近の韓国の世相を反映する内容になっています。まぁ、これも自国の国民が共感できる作品を作ろうとすればこそでしょう。映画はまさに時と場所を移す鏡。もちろん、鏡のように完全な全体像を映してくれるわけではありませんが、むしろ、一部をより印象的に映し出してくれる分だけ、良き教訓として僕たちには受け取られるのではないかと思います。今一度映画に生きる現代の自分自身を見つめてみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人 山本眞之亮 人の成長に興味を持ち、教員免許を取得するも、目下ケニアでサバイバル体験中。最近、人びとが織りなす調和と変化の妙味に、宇宙の神秘を感じてます。
ブログ :成らぬは人の為なさぬなりけり
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