『助け合って逃げよう!』というのは間違いか。「まかせて会員」もビビる豪雨がきたら。
西日本を襲った豪雨の被害が深刻だ。実家が広島で、姉家族が安佐北区に住んでいるので、他人事ではない。姉家族に人的被害はなかったものの、車が土砂に埋まり、今なお断水が続いている。実家のほうはローカル線が運休して、通勤・通学に支障が出ている。
報道の中で、ある被災者が「『助け合って逃げよう』というのは間違いだと分かった。まず自分が逃げることが大事」と語っていた。町会の「助け合い」のあり方が根幹から揺らいでいる。
荒川が氾濫した場合、戸田全域で建物2階まで浸水する。もし太平洋高気圧がオホーツク高気圧に負け、線状降水帯が関東平野にまで伸びていたら、荒川は氾濫していたに違いない。
荒川の氾濫に対して、戸田市の防水害対策はこうなっている。
①氾濫する前に北の高台(以下に詳細)へ逃げる
②逃げ遅れた場合は高い建物(マンションなどの3階以上の場所)へ避難する
③浸水後は無理に避難しない
ありがたいことに戸田市は、さいたま市に掛け合って、さいたま市内の12の小中学校(北の高台とはこのこと)を避難場所に指定してくれている。氾濫の恐れを感じたら、いの一番にそこへ逃げるのだ。距離にして5キロ。自動車で10分、徒歩で30分。あとさきのことは考えず、浸水前にそこへ逃げる。
ただ、健常者はそれができても、高齢者や身体の不自由な人にはそれができない。そこで、市は、町会のほうでそういう方々を一緒に避難させてあげてほしい、と「まかせて会員による避難支援体制」(以下、まかせて体制)を作ろうとしている。
避難支援に協力できる人(「まかせて会員」)が避難困難者(「おねがい会員」)に声掛けをして、車いすなどで一緒に避難するといったイメージだ。今回の豪雨で岡山県倉敷市真備町ではわずか30分で水嵩が腰の高さまで来たという。そうした浸水スピードを考えると、トントン、「〇〇さん、いらっしゃいますか。さあ、避難しますよ。支度してください」などと言っているうちに、まかせて会員もろとも、濁流に飲み込まれてしまうように思えてならない。
役員からは「まかせて会員」と「おねがい会員」を集めて避難訓練をしようという話が出ている。やる気は買いたいが、私個人としては「まかせて体制」の構築は後回しでいいような気がしている。自然の猛威は、もはや地域コミュニティの「助け合い」レベルではどうにもならない規模になっていると思うからだ。
どうせ訓練をやるなら、まだやっていない、近隣小学校3・4階への避難訓練が先だろう。さいたま市への避難訓練が先だろう。もっと言うなら、防災訓練を実施できるだけのスタッフを集めるのが先だ。うちの防災部は今、部長が一人いるだけなんだし。
町会そのものが沈没しそうな現状では、人命を助けることなどできない。
大して人も集まらない訓練をやるよりも、どんな防災グッズがどれだけあって、防災倉庫の鍵は誰が持っているかといった実践的な情報を町会員に周知するほうが、よほど役に立つように思う。
「そういえば、うちの町会には、発電機があったよなぁ」
「確か、ボートもあったんじゃないか」
いざという時に町会の防災備品が使えれば、それこそ人助けになる。
互助、共助の体制は時代的に構築しにくい。人は関りを持つことに消極的で、個人情報も知られたくない。
自助をサポートすることに主眼を置いたほうがいい。っていうか、それしかできない。