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ナナメだから言える
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ナナメだから言える

昔、私が新米教師だった頃、担任をしていたクラスに“K君”という個性が際立った生徒がいた。

どんな生徒だったかというと、純粋で頭が良く勉強ができる一方、コミュニケーションが一方的で、ひとたび何かに興味を持つとそれに向かって突進するので、クラスメイトには色々と迷惑をかけながらも、それを持ち前の愛嬌でカバーしている子だった。

K君のすごいところは、担任や部活動以外の教師にも、実に気軽に(というよりも遠慮なくの方が正しい)声をかける天性の明るさを持っていた。特に、私のクラスを担当してくれていたベテランの数学教師C先生には、授業が終わり教室を出ようとする先生の肩に腕を回しては「でさあ、先生さっきの問題、ちょっと難しいって~」などと話す状況だった。

そこである日、私はK君に話してみることにした。
「K君、あのね。先生への接し方がちょっと近い気がするなあ。特にC先生には。K君の明るさはすばらしいんだけどね、やっぱり社会に出た時にマナーも意識できるようになっていないと、将来困る場面が出てくると思うよ。」
すると、K君は素直に「わかりました。」と言ってくれた。

ナナメのつながりだからこそ

次の日、数学のC先生と廊下で会い、K君が日頃お世話になっているそうで…と話すと、C先生から思いもかけないことを言われた。
「先生は真面目でいらっしゃるのでね、私とK君とのかかわりが不適切にお感じになられたかもしれないね。でも私とK君とは担任でもなく、まして部活の顧問でもない、タテじゃなく“ナナメの関係”なんだよ。タテだと言えないことも、“ナナメの関係”だと生徒が話してくれることもあるんでね。この大きな学校の中で、一人くらいそんな教師がいてもいいと思わないかい?」

後に聞いたところ、K君は自分なりにクラスでの立ち位置に悩み、数学の時間に来るC先生に打ち明けていたことを知った。
軽口を叩きながらC先生にそれとなく言うK君の心情について、気づかなかった自分の行き届かなさと生徒の表層しか理解できていなかったことを、私は思い知ることとなった。

そして現在。

私も子どもを持ち、教師の立場から保護者の立場になってみると、いかに子どもにとって、タテやヨコの人間関係だけでなく、敢えてナナメでいてくれる、ゆとりのある大人達が重要であるかを痛感するようになった。

大切なのは、タテでもヨコでもなんでもいい。
心を許せる誰かがいて、細くていいので、つながれる誰かが傍にいること。

ナナメの人間関係の中だからこそ言える本音、皆さんもありませんか?

この記事を書いた人 おおつかけいこ 教師歴10年の経験をもつ教育者。ライティングの「ものかき」でマネージャーを務めるほか幼児教室も主宰 おおつかけいこの記事をもっと読む>>