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アセット 5 寄稿記事:地域コミュニティに明日はあるか 急務は「地域ネットワーク」!遅れる分、社会の軋みは広がっていく…
コミュニティ コミュニティ 2018.02.25

急務は「地域ネットワーク」!遅れる分、社会の軋みは広がっていく…

先日、「戸田市美笹地区あんしんネットワーク会議」(以下、あんしん)と、「『tocoぷり』を活用した情報発信に関する説明会」(以下、toco)があり、出席した。それぞれは別物だが、ここでの議論を通じて、現代社会が課せられている急務が何なのか、分かった気がする。急務、それは「地域ネットワークの構築」だ。

「あんしん」は高齢者が安心してくらせるよう地域住民と関係機関が連携・協働し、包括的な支援を行うネットワークを作ろうというのが趣旨。「toco」は戸田市政策秘書室が始めたスマートフォン用アプリ「tocoぷり」を使って、行政と市民、そして市民同士の交流を促そうというものである。

包括的な支援を目指す「あんしんネットワーク会議」

「あんしん」では基調講演で、高齢者、要介護者、閉じこもり者が増加する中、介護保険料を引き上げざるを得ないこと、そして、それを抑制するためには自立支援のネットワークを構築しなければならないとの問題提起がなされ、グループで話し合った。町会長、民生委員、医療・保健・福祉機関、警察、教育機関、金融機関、市職員らが一堂に会し、パッと見、とても重要な会議だと思った。

ただ、会議はしょっぱなから躓いた。会則に「会議は原則として公開する」という文言を入れるか否かで揉め、かなりの時間を使ってしまったのだ。この会議の目指すところは、包括支援体制を町ぐるみで作ろうというものであって、会議そのものではない。結局、グループ討議は中途半端に終わり、アクションプランは何も打ち出せなかった。

情報発信にアプリを活用「tocoぷり」

「toco」では、市の担当者がアプリの狙い、活用イメージ、操作方法などのを説明。各町会の代表者が情報発信員となり、身近なこと(道路の穴が開いている、いついつに町会のイベントをやるなど)を投稿。その情報を見て、市が対応したり、一般市民が町会イベントに参加したりする、と見通しを語った。

その後の質疑応答で、参加者たちからはアプリの使い勝手が悪いという指摘が多く出された。ただ、私には「行政と市民、市民同士の交流を図る」という目的自体が不可能に思えて、頭の中は?マークでいっぱいになった。

・町会行事は基本的に町会員のためにやるもので、それを他地域の市民や日本中の人にPRしてどうするの?

・道路の穴などの通報は電話一本掛ければ済むんじゃないの?

・アプリを開いて出てくる情報は既存の公式ホームページと同じで、そもそもアプリに集客力あるの?

・市民同士が交流する場合、普通はLINEとかでやるでしょ。わざわざアプリに登録して、どこの誰かも分からない“市民”と交流する?

かつては市民が税金を納め、行政がインフラを整備する、ということで、大体のことは上手くいっていたのかもしれない。終身雇用、専業主婦といった仕事面、家庭面での安定が崩れ、生活形態も価値観もバラバラに。それぞれの市民がどんな支援・サービスを必要としているのか、行政が把握しにくい時代になった。

市民ですら、隣人に声を掛けづらく、隣人が何を求め、何を嫌がっているのかもよく分からないでいる。

市民同士が交流し、一緒に地域コミュニティを作ったり、町づくりをするということ自体、困難な時代のだ。アプリで人的交流が進むなら、苦労しない、って。行政も市民の本音を掴むのに腐心しているってことだな。

「あんしん」では美笹地区の中心にあったスーパーマーケット『ライフ』が閉店したことが、高齢者の生活に大打撃を与えているとの声が多数挙がった。スーパーが商業としての側面のみならず、高齢者支援の一翼を担っていることの証左だ。こうした観点で、業界の垣根を越えて協力できる地域ネットワークの構築を急ぐ必要がある。構築が遅れる分、社会の軋みは広がっていく。間違いない。

この記事を書いた人 吉原正夫 地域コミュニティが崩壊している。この流れを食い止めるには、どうしたらいいか。地域コミュニティ再生に掛けた現役町会役員の挑戦を綴る。
地域コミュニティに明日はあるか
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