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3.11「絆の時代」には戻れないけれど、もう一度考えたい人との繋がり
コミュニケーション コミュニケーション 2018.03.09

3.11「絆の時代」には戻れないけれど、もう一度考えたい人との繋がり

「世界には35億もの異性がいて。
日常の中で出会えるのは一握り。
そう考えると自分の世界は狭い…」

そんなフレーズからはじまる結婚相談所の長いキャッチコピーを見かける。

最近、結婚相談の界隈で働く人とご飯にいく機会があった。せっかくなので気になっていた事を尋ねてみる「成婚に漕ぎつくためには何が大事なんですか?」と。

すると「相手を受け入れられる事じゃないかな」とのこと。なるほど。「自分の世界は狭い」といいつつ、たとえ出会う機会がいくらあったとしても「受け入れる事」がまた難しいのだ。狭いのは自分の世界だけでなく、相手を受け入れられる心なんだろうなと、とても腹落ちした。自分が変わらないままで現状を変えられる人は確かに限られている。

受け入れられない憂鬱

それにしても、そんな視点で相談にくる人たちと向き合い続けると、どんな気持ちになるのだろう。その狭さをどんなふうに見つめているのかが気になる。Charaの「タイムマシーン」に曲調の似た音楽がお店に流れている。あの曲のPVを最近見る機会があったのだけれど、歌詞がさっぱり聴き取れずに、おもわず検索をかけてみて、そのずいぶんアンニュイな内容に驚いた。

「愛することを大切にできないんじゃないの あーぁ...バカばっかり あーぁ...わからない あーぁあーぁ」とか、「あーぁ どうしよう...“あなたが愛する気持ちになんなきゃ”ね」とか。そんな憂鬱でやれやれな気持ちになることはないのかな、なんてことがふと頭をよぎる。

結婚しなくても幸せになれるこの時代

相談所的には成婚がゴールかもしれないが、結婚はどちらかといえばスタートなはずだ。うまくいかなくなる事もある。しかもやり直しは難しい。なんだかリスクばかりで大変な事のように思えてしまう。及び腰になるのもよく分かる。

そう言えばゼクシィの去年のCMはこんな台詞ではじまる「70億人が暮らすこの星で結ばれる。珍しいことではなくても奇跡だと思った」そしてそこからこのご時勢をよく捉えた印象的なフレーズ「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」が続く。映像も明るくて華やかでゼクシィらしい名CMだと思う。

それでも2011年の樹木希林を起用した同ゼクシィのCMの衝撃的なメッセージ性には及ばないだろう。

できれば今世は離れたままで

内田裕也・樹木希林夫妻、結婚39年目にしてCM初共演となり話題になったが、さらにこのCMが流れると、狙いすましたかのように旦那の内田裕也が、別れ話を持ちかけてきた交際女性に復縁を脅迫をして逮捕されるという事件が起きる。樹木希林は会見で「できれば今世は離れたままで、来世は絶対に会わないように…」と語ったのが印象的だった。

記憶が正しければ、そのあと樹木希林がひとりで出演するCMが流されたのだ。それがゴタゴタのすべてをひっくるめてとにかく秀逸だった。

樹木希林が「やっぱり一人がよろしい雑草… やっぱり一人はさみしい雑草」と種田山頭火の俳句を並べて口ずさむ。ひとりで漂泊し続けた山頭火「やっぱり一人がよろしい雑草」はオリジナルのままだが、続く「やっぱり一人はさみしい雑草」はCMでは少しアレンジされていて、正確には「やつぱり一人はさみしい枯草」である。見事なチョイス。まばたきどころか呼吸が止まってしまうような別格のカウンターを打ち込んできたのだ。

絆の時間はとうに過ぎて

振り返ってみると当時は震災後で「絆」というものが浮かび上がった時代だった。それをよく表しているものが「絆婚」である。相手の収入などの条件や損得ではなく、今までの絆を大切に考えたり、また家族になるという絆自体を求める結婚が増えたという。樹木希林が口ずさむそのCMは「絆」の本質を見事に掴んでいたように感じられた。そもそも絆というのは元来「しがらみ、呪縛、束縛」などのネガティブな意味で使われていたらしく、人と人との結びつき、支え合いや助け合いを指すようになったのは、比較的最近のことだという。

震災から7年が経ち、時代の空気は少しずつ変わろうとしているように思える。結婚しなくても幸せになれる時代というフレーズに象徴されるように、大きな傷は癒えて、どこか乗り越えたような自信すら感じられる。風船で浮かび上がって俯瞰する街は秩序だっていて平和そのものである。

それでも津波によってまるで根無し草のような存在だと感じられたあの時間の「雑草」というワードが懐かしくもある。そんな雑草のほうがよほど人にやさしかったようにも感じられるのだ。タイムマシーンは来ないだろうけれど、たまにあの頃の空気をおもいきり吸いたいなと思う。

ちなみにそろそろ帰りましょうかというところで、その人はコンシェルジュ的に「話は上手ではないけれど…」と、今までの私の話しっぷりをチェックして、婚活スキルが向上しそうなアドバイスをくれた。おお、、これも普段であればお金が発生するのだろうからありがたい。

なにより憂鬱になることも多いのかなと思っていたので、案外この仕事に前向きに情熱を注いでいる人なんだなという事が伝わってきて少し嬉しくなった。蝶々結びのように縁を結んで、片方でも引っ張ればほどけてしまう紐の先を両人に手渡す仕事なのだ。張り合いがあるのは当たり前というものなのだろう。

この記事を書いた人 関口オーギョウチ 埼玉在住。サブカルやマイノリティがつくるコミュニティに関心あり。矯めつ眇めつそこに宿る魂に触れたいなと思ってます。 関口オーギョウチの記事をもっと読む>> 最新記事を毎日お届け
3.11「絆の時代」には戻れないけれど、もう一度考えたい人との繋がり

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