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梅雨に入る前に傘をぶんぶん振っていないかを確認してほしい。映画「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」
コミュニケーション コミュニケーション 2018.05.06

梅雨に入る前に傘をぶんぶん振っていないかを確認してほしい。映画「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」

雨上がりには2種類の人間に出会う。「傘をぶんぶん振って歩く人」と「傘の先端に注意を払う人」だ。観察してみるとほとんど世の中の人間はこの2つに分けられるのではないかという気すらしてくる。

個人的には傘をぶんぶんと振って歩いてもらっても構わない。まあその後ろを歩いていると多少の危なさはあるだろうけれど、するりと前に抜ければいい。

ただ世の中には「雨の日でも会える人」と、「雨の日には会えなくなる人」がいるんだなと最近そんなことを考えさせられた。だからなのか、TSUTAYAにフラフラ立ち寄ると「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」というタイトルの映画に引っ張られた。

ここからはネタばれになるが、この作品は始まるやいなや、妻が唐突に事故死する。いつもの朝、ショパンの夜想曲が流れる中、夫婦が何となしに会話を交わしながら運転していると、運転席側に車が突っ込んでくる。そしてハンドルを握っていた妻は亡くなってしまい、助手席に座っていた夫「デイヴィス」は生き残る。

ただ病院で意識を取り戻したデイヴィスは、どういうわけか妻を失ったのに悲しくない。あたりまえの感情がわいてこない。フラフラと廊下に置かれた自動販売機に小銭を入れてみるがM&Mのピーナッツチョコの袋が引っかかって出てこないので受付にそれを伝えると「時々あるんです」「業者が管理しているので」と、軽くあしらわれてしまう。

それで管理業者の苦情窓口に滔々と自分の身の上を綴った手紙を出してみる。料金の返金を求めるクレームではなく、それはM&Mがあたりまえに出てくるようにして欲しいという訴えと、心のどこかに引っかかて出てこない「悲しみ」の混同であり、それを苦情窓口にひっくるめて転嫁して、対応を求めていくのだ。

義理の父は「妻を亡くした男は“やもめ” 親を失った子供は“孤児” だが子供を失った親には呼び名がない」と訴え、要するに「あってはならない事」だと悲しみのどん底にいるのに、デイヴィスはそれを話半分で聞いているような無関心さ。そんなデイヴィスに対して、自他ともにどうやら壊れているらしいという認識が広がっていく。

そんな中「まず分解しろ」「心の修理も車の修理も同じことだ。まず隅々まで点検して、組み立て直すんだ」という義理の父のアドバイスが引き金になり、デイヴィスは身の回りのものを次から次と解体していく。冷蔵庫、会社のトイレのドア、パソコン、カプチーノマシーン、そしてエスカレートしていって、ついには自宅を解体していく。映画の原題は「Demolition」。解体して、なにが壊れているのかを把握しようともがいていく。

そして解体の果てについに妻が秘密裏に中絶をしていた事実に出会う。どうやら浮気相手の子どもを妊娠していたらしい。「これだ」と故障の原因を突き止めたデイヴィス。妻が私を愛していなかったから、それが心の内側で引っかかって悲しくならなかったのだと腑に落ちる。

If it’s rainy, You won’t see me, If it’s sunny, You’ll Think of me

しかし最終的に妻が車のサンバイザーの内側に貼っていた付箋の「If it’s rainy, You won’t see me, If it’s sunny, You’ll Think of me」というメモに気づく。「雨の日ならあなたは会えない、晴れた日は私のことを想う」。いつも想ってほしいとは言わない、それでも晴れた日にサンバイザーを下した時くらいは、このメモをみつけて私に気付いてほしいという切実なメッセージを目にする。その瞬間、妻への想いが溢れ、ようやく嗚咽しながら涙を流す。

浮気しながらもデイヴィスのことを愛していたのだという確信と、妻への愛をあまりにおろそかにしていたことに気づくのだ。あまりに無関心だった。そのメモによって故障の原因が「他責」から「自責」にシフトすることで、ようやく無感覚の沼から抜け出していく。邦題「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」は少し分かりにくいが、おそらくこの付箋に書かれたメッセージへの深い同意という事なのだろう。

この映画をみた後、大事なことに気づかされた。傘をぶんぶん振っている人をみかけたら、たとえばそれが階段で、後ろを歩く私の目の前にその先端が何度も迫るようなときには、少し立ち止まって、自分も誰かへの関心をおろそかにしていないかという事について、少し考えてみようと思う。つまり「雨の日には会えなくなる人」なんていないのだ。

この記事を書いた人 関口オーギョウチ 埼玉在住。サブカルやマイノリティがつくるコミュニティに関心あり。矯めつ眇めつそこに宿る魂に触れたいなと思ってます。 関口オーギョウチの記事をもっと読む>> 最新記事を毎日お届け
梅雨に入る前に傘をぶんぶん振っていないかを確認してほしい。映画「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」

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